- 弁護士
- 本橋 美智子
「家族法制の見直しに関する要綱案」における子の監護者指定の要否
家族法制の見直しに関する要綱案
令和6年1月30日開催の法制審議会家族法制部会において、「家族法制の見直しに関する要綱案」が取りまとめられた。
これは、離婚後の父母の共同親権を認めるものとして、マスコミでも広く報道され、共同親権を求める父母にとっては待ちに待ったものであろう。
新聞報道によれば、政府は要綱案を基に今国会に法案を提出する見通しと言われている。
離婚後の父母双方を親権者と定めた場合の監護者の指定の要否
離婚後の父母の共同親権を認める方向性は、ある程度予想されたものであった。
しかし、父母の共同親権を認めた場合に、子の監護者を定める必要があるかについては、見解が分かれており、離婚後の共同親権を定めるには、必ず父母の一方を監護者とする定めをしなければならないとする案が提示されていた。
この案の場合には、父母の共同親権としても、裁判上は「主たる監護者」と認定されることが多い母が監護者に指定される可能性が高く、実質的な共同親権とはいえなくなる危険があった。
しかし、この点について、要綱案は、離婚後の父母双方を親権者と定めるに当たって、父母の一方を子の監護者とする旨を定めることを必須とする規律は設けないとした。
そして、子の監護について必要な事項の例示として「子の監護の分掌」を挙げている。
これは、要綱案の検討によれば「離婚をめぐる事情がそれぞれの家庭によって多種多様であることを踏まえ、離婚後も父母が子の養育についての信頼関係や協力関係を維持することができている事例や、離婚後の父母が子の監護教育を分担(分掌)することができている事例なども含め、父母の一方のみを監護者と定めることを一律に必要とする合理的根拠をどのように説明するのかが問題となる。
また、父母双方が親権者となる場合の親権行使について、日常的な行為や緊急の行為については単独行使を認めるものとすれば、監護者の定めをしなくても実際上の不都合は生じないとも考えられる。」との理由によるものである。
離婚後も共同監護を開く道
このように、要綱案によれば、離婚後も子の父母が協力できる場合等には、子の共同親権だけでなく、より進んで共同監護を行う道が開けることになり、子を持つ父母にとっては朗報となろう。
なお、勿論このような方法をとれない事案があることは十分承知していることは付言しておく。