慰謝料の額はどの程度の金額が認められることが多いですか

離婚慰謝料の種類

(1) 離婚慰謝料は、法的な性質として、離婚自体慰謝料と離婚原因慰謝料の2種類に大別されています。
(2) 実例としまして、夫が妻に暴力を振るい、妻が右鎖骨骨折、腰痛の傷害を受けた事案について、①離婚自体慰謝料350万円のほかに、②暴力による入通院慰謝料100万円、後遺傷害慰謝料500万円、③後遺障害による逸失利益約1113万円合計2063万円の損害賠償金の支払いを命じた判決(大阪高判平成12年3月8日)があります。
このうち①が離婚自体慰謝料であり、②が離婚原因慰謝料となります。なお、③は財産上の損害ですので、慰謝料とは異なります。

判決における離婚慰謝料の額

(1) 判決で認められた(主として離婚自体慰謝料の性質をもつ場合の)離婚慰謝料の最高額は、1500万円と言われています(東京高判平成元年11月22日)。
この判決は、最高裁が、従来、有責配偶者からの離婚請求を認めていなかったところ、判例変更をして有責配偶者からの離婚請求を認めた事件の差戻し審です。
この事案は、夫が他の女性と同棲してその女性との間に二人の子をもうけ、別居期間が約40年にも及び、その間、夫は、妻に建物を与えたほかには別居していた40年間何ら経済的給付もしておらず、夫77歳、妻73歳となっているケースであってそれらの事情を考慮して、通常の案件よりもかなり高額の離婚慰謝料額を認めたものです。
(2) そのほか比較的高額の慰謝料額を認めた判決としては、次のようなものがあります。
①夫が高収入の医師であり、妻以外の女性との間で子供が生まれたケースで夫の不貞行為及び悪意遺棄による婚姻破綻の離婚慰謝料として1000万円を認めた判決(横浜地判昭和55年8月1日)があります。
②夫の不貞行為及びその後の暴力によって婚姻が破綻した事案について、1000万円の離婚慰謝料を認めた判決(東京地判平成17年5月30日)があります。
③夫が一方的に同居、協力義務を放棄した等の一連の対応によって婚姻が破綻したと認定し、「妻がこれまでに受けた精神的苦痛、子供の養育に尽くした努力と負担は非常に大きなものであったといえる。」として、慰謝料700万円を認めた判決(東京地判平成19年11月7日)もあります。
(3) 500万円を超える離婚慰謝料が認められた判決の主なものは上記のとおりであり、通常のケースでは離婚慰謝料は、高くても500万円程度と言われています。

家裁実務等における離婚慰謝料の額

離婚調停における離婚慰謝料額については、認められる場合でも、通常の場合には100万円から300万円くらい、大体200万円前後の金額で合意に達することが多いとも言われています。
総じて言いますと、離婚訴訟において離婚慰謝料が認められる場合に、その金額は200万円ないし300万円程度が多く、通常の場合、(特別な事情がある時には、500万円を超えて700万円とか1000万円の請求が認められることもありますが)500万円がほぼ上限といえます。

離婚慰謝料算定の考慮要素

離婚慰謝料の主な算定要素としては、①有責性、②婚姻期間、③支払者の資力、④未成熟子の有無 ⑤夫と妻の収入や職業等が挙げられています。
離婚慰謝料は不法行為に基づく損害賠償請求ですから、これらのうち①有責性が最も重要な考慮要素となると考えられます。
判決では、夫の有責行為のうち不貞行為による婚姻破綻が最も離婚慰謝料を高くする要素になっているとの指摘もなされています。
また、夫や妻の職業が医者や会社経営者等で収入や資産が多く、生活水準が高い場合には、離婚慰謝料もやや高くなる傾向があるとも言われています。

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