離婚する場合、父母のどちらが親権者になりますか

はじめに

父母が協議上の離婚をするときは、協議により、一方を親権者として定める必要があります(民法819条1項)。
また、裁判所の離婚の場合には、父母の一方が親権者として定められます(民法819条2項)。具体的には、家庭裁判所は、離婚の訴えにかかる請求を認容する判決において、夫婦間に未成年の子がいる場合には、職権で父母の一方を親権者として指定することになります(人事訴訟法32条3項)。

夫婦の婚姻中は、夫と妻の共同親権であり、父母が共同して行いますが(民法818条3項)、離婚後は、父母の一方のみが親権者として指定されます。
これは、父母が離婚した場合、共同で子の親権を行使することは事実上困難であり子の利益に沿わないと考えられているためです。

判断の基準

親権者の決定は、子の利益及び福祉を基準として行われますが、以下のような諸事情を考慮して、総合的に判断されます。
【父母の事情】
・監護能力(年齢、性格、健康状態、親族の援助)
・精神的、経済的家庭環境(資産、収入、職業、住居)
・子に対する愛情の度合
・従来の監護状況
【子の事情】
・年齢、性別、発育状況
・子の意思
・親との結びつき
なお、有責配偶者であるか否かはあまり重視されないと考えられています。

母親優先?

 親権者を決める際に、一律に母親が優先するということはありませんが、特に乳幼児の場合には、母親が親権者になることが多いといえます。
 これは、乳幼児期には、母親が主体となって子の監護を行う家庭が多いことから、後述のように、父親と子より、母親と子との結びつきが強いケースが多いため、母親が親権者になることが多いと考えられます。

子の意思尊重

一方、上記の諸事情のうち、最も重視されているのは、子の意思や親との結びつきと考えられています。
特に15歳以上の子に関しては、親権者の指定についての裁判をするにあたり、子の陳述を聴取することになっており(人事訴訟法32条4項)、子の意思が尊重されることが通常です。
また、子は10歳前後以上であれば、意思を表明する能力に問題ないとされており、子が10歳前後以上の場合にも、子の意思が尊重されることが多いといえます。
一方、10歳未満の乳幼児などの場合には、子の意思というよりも、親との結びつき(心理的な関係をより緊密に形成しているか)が重視される傾向にあります。したがって、子と同居している親が親権者になるケースが多いと考えられます。

子の奪取

 上記のとおり、親との結びつきが重要な要素であり、子と同居している親が親権者になるケースが多いといえますが、一方親が違法に子を奪取したようなケースでは、奪取後に子が安定的な生活を送るようになったとしても、親権を認められないこともあります。

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