離婚Q&AQUESTION
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現在の家庭裁判所及び高等裁判所等の実務においては、算定表に従った婚姻費用・養育費の算定がなされています。
算定表は、以下の裁判所のHPに掲載されています。
裁判所|養育費算定表
この算定表は、養育費等の算定の簡易化・迅速化を目指すため、婚姻費用・養育費の算定実務に携わる裁判官らが研究員となった東京・大阪養育費等研究会において、従前の家庭裁判所における実務の基本的な考え方を維持しつつ、簡易迅速な算定が可能になるために作成されたものです(東京・大阪養育費等研究会「簡易迅速な養育費等の算定を目指して-養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案-」判タ1111号巻末綴じ込み小冊子285頁)。
算定表が作成される前の従前の家庭裁判所の実務では、養育費の算定は、子が義務者と同居していると仮定すれば子のために費消されていたはずの生活費がいくらであるのかを算定し、これを義務者と権利者の収入で按分し、義務者が支払うべき養育費を定めていました。
従前の養育費の算定方法は合理的ではあるものの、権利者・義務者それぞれの基礎収入を算出するにあたって差し引くべき公租公課や特別経費の費目や金額を巡って争いが長期化・複雑化し、本来ならば別居直後から支払われるべき養育費の支払が遅延するという問題がありました。
そこで、上記の算定表が作成されました。
算定表は、離婚後の子どもの養育費(表1から9)と離婚前の婚姻費用(表10から19)の表があります。
そして、婚姻費用・養育費の表の中でも、子どもの人数や子どもの年齢ごとに表が分かれています。
それぞれの算定表では、義務者と権利者の収入を、それぞれ縦軸と横軸に当てはめると、交差する点が標準的な養育費の額を示すようになっています。
標準的なケースとは、同居していた夫婦が別居し、夫婦の一方が子を監護しており、子が学齢期であれば公立学校に通っているという場面を想定しています。
なお、義務者とは養育費を支払う側をいい、権利者とは養育費を受け取る側を言います。夫が働き、妻が家事をしているというケースだと、夫が義務者、妻が権利者になります。また、夫婦共働きであっても、夫の方が所得が高いという場合にも、夫が義務者、妻が権利者になるでしょう。
【具体例】
・権利者が6歳と12歳の子を養育しており、単身の義務者に対して子の養育費を求める場合
・権利者は給与所得者であり、前年度の源泉徴収票上の支払金額は200万円
・義務者は給与所得者であり、前年度の源泉徴収票上の支払金額は725万円
【考え方】
①権利者の子は、2人で7歳と10歳ですから、養育費の表の中から、表3「子2人表(第1子及び第2子0~14歳) 」を選びます。
②権利者の年収は、表の横軸上の「給与」の欄の「200」を基準にします。
③義務者の年収は、表の縦軸上の「給与」の欄の「725」を基準にします。
④横軸の「200」の欄を上にのばした線と、縦軸の「725」の欄を右にのばした線の交差する欄は「8~10万円」の枠内となっています。
⑤標準的な養育費はこの8~10万円の枠内にあり、当事者の協議では、その間の額で定めることになります。
⑥なお、仮に8万円とした場合には、子1人当たりの額は、子2人の年齢がいずれも0から14歳であり指数は同じあることから、2分の1の各4万円となります。
当事者間で合意した場合には、算定表で算出された金額とは別の婚姻費用や養育費を定めることは可能です。
しかしながら、婚姻費用や養育費の調停・審判においては、実務上、算定表の幅の中で決められるのが通常であり、この幅を超えるような金額となるのは、算定表によることが著しく不公平となるような、特別な事情がある場合のみと考えられています。
算定表には一定の合理性が認められますが、算定表では、夫婦の総収入から税金や経費を差し引いた金額を基礎収入として養育費を算出するところ、基礎収入は総収入の4割程度となるため、養育費が低すぎる、税制改正や物価変動を反映していないといった指摘がありました。
算定表における問題点を解消するため、日本弁護士連合会は、平成28年11月、総収入から差し引く経費に住居費や保険料を含めないことで基礎収入が総収入の6~7割程度となり、算出された養育費が簡易算定方式の約1.5倍となる新算定方式を発表しています。
また、最高裁判所司法研修所が、これまでの算定方式の見直しを検討していることが報道されました。それによると、平成31年5月中を目途に新しい算定方式に関する報告がまとめられる見通しとなっています。裁判所による新しい算定方式が公表されますと、家裁実務においては、新しい算定方式に従って養育費が算定されることになることが予想されます。