決められた養育費を支払ってくれない場合、どうしたらいいですか。

養育費の不払について

離婚するに際して、きちんと養育費について決めたにもかかわらず、元配偶者から支払われないというケースはしばしばみられます。厚生労働省の平成28年の調査によりますと、母子家庭で養育費の取り決めをしているのは43%、実際に受け取っているのは24%にとどまっています。つまり、養育費の支払を受けているのは4人に1人程度にすぎないというのです。
養育費が支払われなくなる理由については調査されていないためわかりませんが、勤務先でのリストラや転職による収入減により支払う経済的余裕がなくなった、子どもと面会させてもらえないから支払いたくない、子どもと一緒に生活していないため子どものために養育費を支払うことの実感が乏しい、再婚するなどして生活状況が変わった、といったことが考えられます。

養育費について調停・裁判や公正証書で取り決めている場合

離婚調停や離婚裁判で養育費を取り決めている場合や、公正証書で養育費を取決めるとともに、もし不払いがあったときには強制執行に服する旨を約している場合(執行認諾文言がある場合)には、給料や預金の差押などの強制執行手続を行うことができます。
給料は生活の糧であり、全額を差し押さえてしまうと生活が成り立たなくなるため、通常の債権の場合、原則として給与額(税金等を控除した手取額のことをいいます。以下も同じ。)の4分の1までしか差し押さえることができません(給与額が44万円以下の場合)。もっとも、未払債権が養育費の場合、子どもを養育する側の生活もかかっていることから、給与額の2分の1まで差し押さえることが可能となっています(給与額が66万円以下の場合)。また、通常の債権の場合は、支払が遅れた都度差押の申立てを行う必要がありますが、養育費の場合は、支払期限が到来した未払の養育費とあわせて、支払期限の到来していない将来分の養育費についても一括して申立てをすることが認められています。したがって、支払期限が到来している未払の養育費について差押えをする際に、あわせて支払期限が到来していない将来分の養育費についても差押の申立てをしておけば、毎月の支払期限が到来する度に、あらためて差押の申立てをする必要はありません。
例えば、養育費の支払義務者の給与が24万円の場合、1ヶ月に差し押さえることができる給与は12万円となり、一度差押を行うと、その後会社を退職するまでは未払分を回収するまで差押の効力が及ぶことになります。また、養育費の義務者の給与額が66万円を超える場合は、当該給与額から33万円を引いた額まで差し押さえることができますので、給与額が80万円の場合には、47万円まで差し押さえることが可能です(80万円-33万円)。
預金の差押については、一つの銀行口座に未払額を超える預金残高があれば未払額全額の回収ができますが、預金残高がわずかで未払額に充たない場合には、他の銀行口座や他の財産を差し押さえる必要があります。

養育費について調停・裁判や公正証書で取り決めていない場合

養育費について当事者間の口約束だけで取り決めをした場合や、当事者間だけで作成した合意書面で取り決めをした場合、未払養育費を支払ってもらうためには、別途裁判を提起して判決を取得し、その判決に基づいて強制執行を行う必要があります。

履行勧告

家庭裁判所の調停や審判で養育費を取り決めたにもかかわらず、支払がなされない場合には、家庭裁判所に履行勧告を求めることができます。
家庭裁判所に対して履行勧告の申出をすると、家庭裁判所は、相手方に取決めを守るように説得したり、勧告したりします。
履行勧告の手続に費用はかかりませんが、義務者が勧告に応じない場合は支払を強制することはできません。

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