離婚Q&AQUESTION
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養育費は、原則として、子が20歳になるまで支払うもので、その支払い期間は相当長期になることが多いのです。
ですから、当事者の合意、調停、審判等で養育費の金額を決めても、権利者や義務者の身分関係や経済状況等が変化した場合には、養育費の金額を変更する必要が出てきます。
このように養育費の額を決めたときの事情が変更した場合には、養育費の減額・増額請求をすることができます。
民法880条は、「扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。」と定めています。
養育費は扶養料とは異なりますが、判例、実務ではこの規定を準用して、養育費の変更ができると解されています。
一般に法律上の事情変更とは、①合意の前提となっていた客観的事情に変更が生じたこと ②その事情変更を当事者が予見できなかったこと ③事情変更が当事者の責めに帰すべからざる事由により生じたこと ④合意どおりの履行を強制することが著しく公平に反すること を要件とすると解されています。
養育費の減額の場合にも、②の事情変更を当事者が予見できたかどうかが問題となることがあります。
例えば、義務者が養育費の合意をした時と同じ会社に勤務しており、残業手当や家族手当の減少等によって収入が減少した等の場合には、この事情は合意の際に予見できたとして養育費の減額が認められない可能性があります。
裁判所は、一度確定した養育費を変更することは当事者双方の安定した生活を不安定化すると考えますので、収入の多少の減少は、養育費減額の理由とはならないと考えています。
では、どのくらいの収入の減少があったときに養育費の減額が認められるかは、事案にもよるので難しいところですが、松本哲泓元判事は、「金額では、分担額が2割程度変動するのであれば、事情変更はあるとしてよいように思われる。」と書かれています(「婚姻費用・養育費の算定―裁判官の視点にみる算定の実務―」)ので、これが一つの目安になると思います。
改定された算定表に基づいて、減少した収入による養育費の額を算定してみて、それが現状の養育費より約2割程度減額となるのであれば、養育費の減額の請求、調停申立てをしてみるのがよいと思います。
いつの時点の養育費から減額が認められるかについても問題となります。
これについては、①事情変更時(収入が減少した時点) ②養育費の減額請求時 ③養育費減額の審判時等の説があり、判例によっても異なります。
しかし、実務では、調停申立時または審判申立時とするのが最も多いと思います。
ですから、収入が減って、これまでの養育費を支払うことが難しくなったときには、権利者にその旨の通知を出して、権利者がこれを承諾してくれない場合には、速やかに養育費減額の調停申立てをすることが大切です。