妻が再婚した場合にも、子の養育費を支払う義務はありますか

親の養育費支払い義務

 親は、未成熟子に対し、自己の生活を保持するのと同程度の生活を保持させる義務(生活保持義務)を負っています。
 父は、子の親である以上、離婚して親権者でなくなった場合でも、子の生活保持義務を負っているのです。
 そして、父母の離婚後には、子の監護に関する費用として(民法766条1項)、子を監護している親(監護親)が、子を監護していない親(非監護親)に対し、養育費の支払いを求めることが一般的です。

監護親が再婚した場合

 離婚後に子の監護をしている元妻が、再婚することはよくあります。
 平成28年度の厚労省の人口動態統計特殊調査によると、平成27年の全婚姻に占める、妻が再婚の場合の割合は、16.8%に上っています。
 また、平成19~23年に離婚した妻が、離婚した年次を含む離婚後5年以内に再婚した割合は、24%から22%となっており、特に20代、30歳代前半で離婚した妻の再婚割合は30%を超えています。
 ですから、離婚の際には、妻が再婚する可能性があることは念頭に置いておく必要があります。
 そして、監護親の元妻が再婚した場合であっても、父と子との関係は変わりませんので、非監護親の父の養育費支払い義務がなくなるわけではありません。

再婚相手と子が養子縁組をした場合

 監護親である元妻の再婚相手と、子が養子縁組をすることも少なくありません。
 未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければなりませんが、配偶者の子(いわゆる連れ子)を養子とする場合には、家庭裁判所の許可は必要ありません(民法798条)。
 そして、養子となる者が15歳未満のときには、その法定代理人である親権者が、縁組の承諾をします(民法797条1項)。養子縁組をするのに、親権者でない非監護親の父の承諾を得る必要はないのです。
 ですから、父は、子が元妻の再婚相手と養子縁組したことを知らない場合も少なくないのです。

再婚相手と子が養子縁組をした場合の子の養育費支払い義務

 子が元妻の再婚相手と養子縁組をした場合には、養子制度の目的や、未成熟子との養子縁組には子の養育を全面的に引き受けるという暗黙の合意が含まれていると考えられることから、養親が実親に優先して扶養義務を負うと解されています。
 しかし、養親が十分に扶養義務を履行できない場合には、実親が養育費の一部を負担することになります。

再婚相手と子が養子縁組をしていない場合

 再婚相手と子が養子縁組をしていない場合には、再婚相手は子に対する扶養義務を負っていないので、元妻の再婚によって、実父の養育費負担義務は影響されないことになります。
 しかし、元妻の再婚相手に経済力があり、子が事実上再婚相手による扶養を受けているような場合には、実父の養育費負担義務を軽減することはあり得ます。
 離婚後再婚した元妻が、養育費の増額を求めた事案について、大津家裁平成20年6月10日審判は、「少なくとも申立人(元妻)の現夫の収入から申立人に対する生活費として相応の所得移転(所得分配)があるものとみなし、これを申立人の実収入に加算した上で」養育費の算定を行っています。
 このように、子と再婚相手が養子縁組をしていない場合であっても、再婚相手の収入の一部を元妻の収入とみなして養育費を算定することもあり得るのです。

児童扶養手当の支給

 離婚したひとり親については、所得制限はありますが、児童扶養手当が支給されます。
 しかし、児童扶養手当は、当該児童が、母の配偶者に養育されているときには支給されません(児童扶養手当法4条2項4号)。そして、この配偶者には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含みます(同法3条3項)。
 母の再婚相手と子が養子縁組をしない限り、再婚相手には子の扶養義務はないのですが、児童扶養手当については、母が再婚していると、子は母の配偶者に養育されていると認定されて児童扶養手当が支給されない可能性があります。

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