退職金は、財産分与においてどのように考慮されますか

はじめに

財産分与において、一方当事者の将来の退職金が問題になる場合があります。
たとえば、夫が会社に勤続中であり、将来的に退職金を受け取るものの、離婚時点ではまだ受け取ることができないという場合に、この退職金を財産分与において考慮することはできるのでしょうか。

退職金について

退職金は、勤続期間中の労働の事後的対価と考えられています。
そこで、婚姻期間中に労働した分の退職金を評価して、財産分与において考慮することが考えられます。

退職金の評価方法

いまだ支払われていない退職金をどのように評価するかについては、裁判例等でも分かれているようですが、一般的には、別居時に自己都合退職した場合の退職金相当額を考慮する、という方法が取られることが多いようです。
定年退職時の退職金より、自己都合退職の場合の退職金の方が低額であることが通常であることから、退職金の評価額としては、低額になります。

一方、定年退職が比較的将来に迫っているような場合には、上記とは異なり、定年退職時の退職金から、別居後労働部分の退職金相当額を差し引き、中間利息を控除して算定する方法が取られることもありえます。
この場合の方が、定年退職時の退職金が基準になることから、退職金の評価額としては、高額になります。

他にも、定年退職時の退職金から、別居後労働部分の退職金相当額を差し引くが、支払時期を退職時とするといった考え方もありますが、支払時期が将来になると支払いの確実性が失われることになることから、実務上はあまり用いられていないようです。

受給済の退職金について

すでに一方当事者が退職金を受給している場合にも、これを全額考慮すべきかどうかが問題となることもありえます。
勤続期間は30年である一方で、婚姻期間は3年といったような、勤続期間と婚姻期間が大きく異なるような場合です。
このような場合には、婚姻期間中の労働に対応する部分だけを財産分与において考慮することが考えられます。
別居前に退職金が支払われ、その後退職金によって不動産や株式を購入し、別居時には、不動産や株式になっていた、などの場合もありますが、このような場合には、不動産や株式など、別居時の対象財産を基準として算定することになると考えられます。

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