財産分与において企業年金はどのように考慮されますか。

企業年金や厚生年金とは

 会社員の場合、通常は厚生年金に加入しています。また、公務員の場合には共済年金に加入しています。
 一方、会社員の場合、厚生年金とは別に、企業年金に加入している例も多くあります。
 企業年金とは、各企業が独自にもうけた年金であり、私的な年金制度となります。
 企業年金は退職後に受け取るのが通常ですが、受け取り方法としては、一時金と年金があります。

 企業年金について詳しくは、以下のHPをご確認ください。
 企業年金のしくみ|企業年金連合会

 退職前に夫婦が離婚する場合、片方の配偶者が企業年金に加入して婚姻期間中に掛金を支払っていると、離婚時の財産分与において、将来支払われるはずの企業年金をどのように考慮すべきかという問題が発生することがあります。

離婚時における厚生年金や共済年金について

 厚生年金や共済年金については、離婚時には年金分割の制度があり、年金分割の制度の中で考慮されますので、財産分与においては考慮されません。

離婚時における企業年金について

 一方、企業年金に関しては、年金分割の制度がないため、財産分与の中で考慮される可能性があります。
 ただ、現在のところ、財産分与において、明確な取り扱いは決まっていないようです。
 

財産分与における退職金の考え方の応用

 考え方としては、財産分与における退職金の考え方が参考になるように思われます。
 退職金をどのように評価するかについては、一般的には、別居時に自己都合退職した場合の退職金相当額を考慮する、という方法が取られています。
 そこで、企業年金の場合にも、別居時に自己都合退職した場合の年金支給額相当額を算定することができるような場合には、この年金支給額相当額を財産分与の対象とすることが考えられます。

 また、定年退職が比較的近い将来に迫っているような場合には、定年退職時に支払われる年金から、別居後労働分を差し引き、中間利息を控除して算出するという方法も考えられます。
 たとえば、65歳に年金が支払われる予定で、63歳に別居を開始したというような場合には、2年分の年金を差し引いたうえ、中間利息を控除して現在価値に引き直す、という方法です。

一時金か年金か

 上記のような算定方法は、企業年金の受け取り方を一時金に選択できる場合には、一時金を選択した場合を想定して行うことで、参考になるものと考えられます。
 一方、受け取り方を年金しか選択できない場合には、年金支給相当額を直ちに計算することができません。
 この場合、寿命の想定なども行うことになりますが、将来支給部分を含めて現在価値(退職時の価値)に計算しなおすという方法が考えられます。
 たとえば、65歳から終身で年金を受け取る場合には、寿命を想定して、寿命までの支給されるはずの年金を算出したうえで、中間利息を控除して現在価値に引き直す、という方法です。

既払いとなっている企業年金について

 別居時に既払いとなっている年金については、支給実額を基準として、そこから同居時の労働に対応する分を対象として算出するものと思われます。
 たとえば、64歳から別居し、65歳に年金が支給された場合には、支給された年金のうち、64歳までの分を財産分与の対象にする、ということになります。

財産分与の支払方法

 企業年金を年金として支給される場合には、財産分与において支払う場合には、一括して支払うのではなく、いついつまで、毎月〇円を支払え、といった内容の判決がなされることもありえます。
 

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