財産分与において、相手方名義の財産を取得することはできますか。

協議離婚における財産分与の方法

財産分与の対象財産としては、預貯金、金融資産、不動産など様々あります。
協議離婚において、財産分与に関してお互いが了解すれば、相手方名義の財産を取得することも可能です。
たとえば、自宅不動産について、夫婦の共有持ち分であったが、離婚を機会に、一方の持ち分を他方が取得し、単独所有にする、などという方法です。

裁判離婚における財産分与の方法

一方、協議離婚を行うことができず、裁判離婚をする場合に、相手方名義の財産を取得することはできるでしょうか。
財産分与は非訟事件であり、家事事件手続法39条別表第2の審判事項です。
そこで、裁判所は申立人の主張に拘束されることなく、一切の事情を考慮して、自らその正当と認めるべきところに従って、分与の有無、その額及び方法を定めることができます。
したがって、財産分与の審判では、一方から一方に金銭の支払を命じることが通常ですが、そうではなく、相手方名義の財産を移転することを命じる審判も可能と言えます。

居住用不動産について

相手方名義の財産の取得を希望する場合として、居住用不動産の分与を求める例は多いと思われます。
そして、たとえば、X(夫)、Y(妻)がおり、財産分与の対象財産が、X名義の居住用不動産しかない場合をで、Yが居住用不動産の取得を希望し、Xが取得を希望していない場合を考えてみます。

この場合、居住用不動産が財産分与の対象財産になるとすると、本来であれば不動産の持ち分2分の1をYが取得することになります。
ただし、Xが不動産の取得を希望していないため、Yが不動産の全部を取得する代わりに、Xに対して不動産の持ち分2分の1の代金相当額を支払う、という内容での審判がなされることもありえます。
このような審判がなされる前提としては、Yに代金を支払う資力があることが必要になります。
実際にこのような審判がなされる場合には、不動産の所有権移転登記手続と代償金支払を同時履行として引換給付判決が命じられることが多いようです。

一方、Xに資力がない場合には、不動産の持ち分2分の1をYが取得するという審判がなされる可能性もあります。
この場合、後日、Xの持ち分をYが買い取ったり、不動産を共同で売却したりすることが考えられますが、XY間で協議ができないような場合には、共有物分割請求訴訟などによって解決をせざるをえなくなる場合もありえます。

不動産の現物分割を命じる場合の審判主文

不動産の現物分割を審判において命じる場合、「別紙物件目録記載の不動産について、財産分与を原因とする所有権移転登記手続をせよ」という給付命令のみを主文にかかげる例が多いようです。

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