夫が浪費して、夫婦の預金を使ってしまった場合には、財産分与はゼロですか

財産分与の基準時は、別居時です

 離婚の際の財産分与の対象となる財産は、婚姻後に夫婦が協力して取得した財産です。
 その対象財産を確定する基準時は、別居時になります。
 別居後には、夫婦の経済的な協力関係がなくなっているからです。
 ですから、別居時にあった預金は、仮に別居後に夫が使ってしまったとしても、財産分与の計算では、財産分与の対象になります。
 仮に、別居時に300万円の預金があり、別居後に夫がその300万円の預金を使ってしまった場合でも、原則として、妻は夫に対し、300万円の2分の1の150万円の財産分与請求権があることになります。
 しかし、夫に全く資力がない場合には、この150万円の財産分与を現実に取得できない可能性はあります。

夫が浪費して、別居時に財産がない場合

 夫が浪費家で、別居時に預金等の財産が全くない場合には、原則として清算的財産分与はないことになります。
 しかし、判例では、特殊な例ですが、本来なら財産があったはずなのに浪費等で財産が形成できなかった場合に、かつて存在した預金と浪費分を考慮して、浪費しなければあったであろう財産を財産分与の対象として計算したものもあります(浦和地裁昭和61年8月4日判決)。
 また、別居時に財産が全くない場合には、妻の生計が成り立つようになる期間中の扶養的財産分与を認めることはあり得ます。
 しかし、基本的には、別居時に夫婦で作った財産が何も残っていない場合には、財産分与はないことになります。
 ですから、婚姻中から夫婦で互いにお金の使い方をよく管理しておくことが大切です。

財産分与のその他の記事